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吉田修一は文学、エンターテインメントを問わず、まだ挑戦していないジャンルの小説に彼流でかかっていく作家だけど、これは彼スタイルの青春小説だ
文体はかなり近現代の青春小説を意識し模倣している
若さゆえの横柄さにみちた会話、カタカナで使われる副詞、現在形の語尾
出会った人々に、かけがえのないものだとは強く残さずに、しかし他にない色として、彼らの青春時代の思い出を濡らしていったふらふらした男、横道世之介
無垢でありながら自分自身に対して調子がよく、人を笑うことはあっても馬鹿にすることはない
大学生特有の、自分はもう大人だと思いながら、自分には何もないという劣等感から過剰につくりあげてしまう理想像的キャラクターを自己投影してしまっている人々を、自分だけは同類にならないまま受け入れている
横道にそれまくりな分、一直線だが虚飾のある他者よりありのままでいる彼に対し、時にいいように扱いながら人々は彼とともに青春時代にちょっと寄る横道のすばらしさを読者は体験していくことができる
他の登場人物が時を経て青春時代に彼がいたということを忘れていくのに、忘れるはずもない彼の家族は別として、ただ一人強く覚えている女性、祥子
彼を忘れない彼女もまた彼と同じく虚飾をしないしできない人物だったのが興味深かった
胸が大きかったのはしれているが特徴的な口調以外かわいかったのかもわからない金持ちのお嬢様、祥子
横道世之介に惚れた彼女は彼とは対照的に一方通行だ
そして彼女はかなり行動的な人間でもある
恥が彼女を時にはばむ唯一の壁ではあったが、それを彼女のために除いたのは世之介だ
青春は自分がもう何でもできてしまいそうだと万能感を覚えた後に自分の無力さに気づく通過儀礼的期間だが、その気付かせる作業を無意識の良心によって行った横道世之介は久々に日本文学に「横道世之介的」と形容できるかもしれないひとつの典型として新たに生まれたキャラクターじゃないだろうか
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