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四十の年に入ると迷いはなくなりはじめるため、不惑とも呼ばれる
といっても現代の四十歳なんて惑いまくりなのです。

働き盛りの年に入りながら目に明らかに現れてきた老いを鬱陶しくみつめながら
男はなんでもないつもりでまた性へ溺れていってその様に誘われて幾人かの女もあつまってくる
そして二十代や学生などのよくある性を描くのとは違ってここに出てくる性に絡みつかれた登場人物はみんなふてぶてしいほど自分中心ですし世間をとても気にします。

もしかしたら不惑というのは自分のことしか考えなくなるから惑わされなくなるのかもしれません。

女たちは全員が全員ひとりでは解決できない不穏を抱えていて平常を何事もないようにすごしながら裏ではおびやかされていて
ひとりのふてぶてしい主人公の存在によって花開きながら男に好き勝手はさせない距離をたもちつづけます。
その間に朝顔の花が咲いています。

古井由吉を読むのは初めてでしたが、恐ろしいほど美しい文章を書く人です。
古来の日本語の特徴を受け継いだ主語を多分に省略して間とふくみをもたせてゆるやかにリズムをつけていく文章で、それによって想起されるイメジュリの妖艶さは全編通してすさまじいものがあります。
本をまったく読まない人には知るわけもない作家かもしれませんが、もしエンターテインメント性以外の楽しみを本から見つけたいと思ったならゆっくりとこの本を読むのがおすすめです。
本を読む速度を誇る人がいますが、あれはバカです。本はゆっくりと読みましょう。

気に入った言葉
女の容色よりも甚しく男の精神は衰えやすい

「大きくて、苦しそうですね」背後で井手がつぶやいた。振返ると金網の前に立ち、いたましげな声を洩らしたにしては涼しい目つきで魚たちの、なるほど病いみたいな肥満を眺めていた。
「暑さに往生しているな。人間の魂も、今ではあんなものだろうか。昔は螢になぞらえたりしたようだけど」

男に抱かれたばかりの裸体の声を、聞き耳を立てた女が逃がすわけもない。

「そうなの、ひとつなの」つぶやき出した声が哀しげになっていた。「あの場所この場所で、分けられない。ひと頃、そんなことをしていたら、狂ってしまった。自分の居所がわからなくなって、一度、人中でうずくまりこんでしまったことが、あるんですよ。だんだんに直してきました。自分のことがやっと糸みたいに、細く感じつづけられるようになったかと思ったら、夜道で変な人たちにつきまとわれるようになったりして。つけられるともう、右へも左へも逸れられない。あの人にも話したんですよ。そんなことを。今はたった一人、男の人がいるということも。
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