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女の肌の温もりはすぐ伝わる。
中上健次、「赫髪」
過去の男に性を仕込まれた女。
女には意識がなくても彼女のささいな動きに逐一着いて回る過去の男の影がある。
それは男の欲望が憑依した影だ。
精神的な充足を持たない肉体のみの性交が本能への帰着でなく別世界への没入だとする。たとえば乙女へその初めてのときから精神的充足を教えなかったとすれば、それはひとえに未経験の領域へ突っ走って行くものとなるだろうから。
この小説に出て来る髪の赤い女。
その赤さは傷みがちで安っぽく、女が自ら染めようと思う色合いでないどぎつさで、それはありありと過去の男によるものだとわかり、現実にてまさに火照っている彼女が、まさにその火照りが過去の男によって作り上げられたものだと象徴している。
主人公の男は女との肉体的世界に没入するが、その快楽の手前にいつまでもちらつくのはやはり過去の男の色彩を持った影である赤い髪で、浅黒めのただでさえ官能的に映りうる肌はいっそうと性の香りを常にふりまく表面になっている。
しかし肌は、女が男の硬質な張りを頼りがいを触れられるものとして確めようと指を滑らせるように、男にとってもそのいとも簡単に破れてしまいそうな柔らかさから危うい割れ物であることを確めるものだ。
その肌にふれると自分の肌よりもしっとりしているのがわかり、やわらかな心地よい抵抗感をはらんだ滑らかさと、自分と同じ肉が詰まっているとは思えない弾力がある。
これは確かに割れ物だ。
だが男は女を手荒く扱う。
赤い髪によって憑依した過去の男の影を彼は追いかけたいからだ。
女の応じる限りにずかずかと荒々しく踏み込んで行くそこには女にしか経験できないだろう没入感があり男は容易に抜け出せなくなりその性的生活は社会的生活を脅かし男は仕事中にさえ勃起をおさえられなくなり、逃げ込む性への入り口は赤い髪の女の肌がもつ温もりだった。女の肌のぬくもりはすぐ伝わる。
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