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「なんで俺が応援したのに負けるんだ」と厚い眉毛の老人が勃起した陰茎を路上に置かれた障子に突き立てていた。障子は乾いた音をたてて破れ、それを見た年増は持っていた化粧ポーチを力一杯障子にぶつけた。本は見事、的に当って路上に落ちた。 彼は昇天した。
 そのとなりにはたくやとひろしとひろやの三人が昇天している老人の息子の機嫌をとっているのだが、息子はどうも影がうすいのか、怒っているらしいことはわかるのだがどうもよく見えない。そもそも近くにいるツバメの巣のような頭をした老人が張りのない声をマイクの音量を精一杯上げて「かいよーかいよー」言っていたり有名なおふくろが歌ったり聴衆たちが熱中症で倒れたりしているのでもうなにがなんだかわからないのだが、とにかく残りの十八人が見当たらないし、権力のすきな嫌われ者はまだ生きている。
「なんかお祭りみたい」と美幸は言った。白い無地のTシャツに同じく白でレースのショートパンツを履いてすっきり伸びた脚の先で履いたパンプスだけが黒い。彼女はしっとりと首筋に汗をかいていた。
「お祭りだよ」と隣の多久が言った。多久はなぜだか肌を隠したがる。この熱さのなかでもまるでそういった生理的な機能を持ち合わせていないかのように汗一つかいていない。「なぜか全国みんなお祭り状態なんだよ」
「でも困るな。人が多すぎて行きたいところへ行けない」彼女は駅の近くにあるパティスリーのモンブランが食べたくなっていたのだった。紐状のクリームをフォークで切り分けてしまうことや、その舌触りを楽しむうち口中からこぼれそうなほどひろがる栗の香りを想像するともう行けないと今日がだめな一日になってしまうように思えてならなかったのだ。
「構わないんだよ美幸がお金を使えなくても」と多久は美幸のために人々の群れを押し分けながら進んでいく。「結果的にお金が使われているから大きな目でみればプラスなんだ」
「そんな大きな目をもった大きな人には栗の味なんてわからないのに」
「仕方ないよ、選挙になると繊細なものは見放されるし、繊細さを見放すことが喜ばれる。どんなに良い食事を普段食べていようとこの時ばかりは牛丼やミラノ風ドリアを食べなければならない。そして選挙が終わるともとの生活に戻ってメディアはその繊細さをつつく」
「ふーん」
「どうしてこういった政治的な人混みは夏休みのディズニーランドやUSJよりも進めないのかというと、ここにいる政治的な人々みんなが応援している自分を迷惑そうな顔をして抜けていこうとする人々に優越感をみせしめたいからなんだよ。彼らは声をあげずに物事を推し量って自分なりの判断を下す人々を理解できないから、自分たち未来を憂う優秀な人々と、間違った未来を望む敵対勢力と盲目的な烏合の衆しかこの世にいないと思っているし、そう思うことで自分たちが気持ちいい。より気持ちよくなるために身体をぼくらに押し付けてこすり上げようとしてくるんだ」
 もう美幸は聞いていなかった。
 美幸は多久の手を頼りに人々の間を進んだ。一歩一歩足をすすめるたびに、周りの人々はあえぐようにごうごう唸った。身体は暑くぐったりしているのに、彼の手をつかむ掌と人々の声が吸い込まれてゆく耳のなかだけはひんやりとしていた。マイクの声がゆっくり彼女から遠ざかり、その分光が濃く強くなっていった。
 途切れることなく、人々は泣き続けていた。人混みを抜けると、外の明るさが一瞬にさえぎられめまいがした。波のように押し寄せてくるスローガンに神経を集め、しばらく足をとめているとうすぼんやり奥にたたずむパティスリーが見えてきた。美幸は破壊された繊細なモンブランを食べるために、パティスリーに向かって歩き出した。
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「つまりという言葉のあとは大抵なにもつめられていない」とそれだけが白地に黒く書かれた中吊り広告をみているうちに電車は五条について美幸は大和大路通を下がっていった。何十年も反対されている看板が昭和っぽく色褪せる葬儀場を過ぎると道は両通になり豊國神社の巨岩が左手に連なる。正面通とぶつかる角にあるよもぎうどん屋に入った。有芽美はそこで待っていた。
「あ、美幸ちゃん!」と有芽美は小さな身体を嬉しそうにぴょんぴょんさせながら「こっちだよ」とテーブルへ促した。
「どうしたの?」と美幸が席についておしながきに目を通すと、有芽美はとたんに落ち込んだ顔をする。
「あのね、大変なことになっちゃったの」
「どうしたの?」
「あーわたし弱者になりたい」
「どうしたの?」
「強者ゆえの悩みなの」
 どうしたのと繰り返すのもばからしくなってきた美幸は店主によもぎうどんのざるを頼む。有芽美もあわてて天ぷらよもぎうどんを頼む。
「大変なのによく食べるね」
「ねえ美幸、私太ってないから、ぽっちゃりなだけだから、食べていいの」
「早くなにがあったか話してくれる?」
「そうそれがね、私ほら強者でしょ? 愛され系マシュマロ女子の旗頭として新時代カリスマモデルって言われてるじゃない? それでね私あるバンドのボーカルが好きになったの。私はファンで向こうはミーハーでお互い利害関係が一致した感じで何かと会ってたの」
「ああ」と美幸は合点した「あのリテラチャースプリングの件ね」
「うん、あとから奥さんいるってわかってさでもそれでもいいやーって思ったのね別れるっていうから、でもそしたら週刊誌にすっぱぬかれちゃって、最初は友達ってことでやりきる予定だったんだけど、それバレちゃって、じゃあ許してもらえたってことでやりきる予定にしたんだけど、それもバレちゃって、彼のこと大好きだからまた一緒にいたいのに。わたしネットで限りなく黒に近いデブーとか言われてて、これって私が強者だからでしょ、もし私に手足がなかったらここまでやんやん言われなかったと思うの。だからどうやったら弱者になればいいと思う?」
「そういうことは言わないほうがいいよ有芽美」
「どうして?」
「差別される要素について話していいのは差別されてる人たちだけだから。同じ障害でも、彼が笑えばバリアフリー有芽美が笑えば差別になっちゃう。それに彼は手足の代わりに大量のファンネルを従えてるから、手足なんて飾りのキュベレイみたいなものなの」
「なにか私に弱者になれる要素ないかなー」そういった時にちょうどよもぎうどんができあがった。「あ、あとごはんもお願いします」と有芽美は言った。「あいよ、いつも通りね」と店主はにっこりしている。天ぷらをかじりうどんをすすりごはんをかきこむルーチンを高速で回す彼女を美幸は自分が箸にとったうどんをつゆに浸すのすら眺めていた。
 波のように震えている肌はその稜線で微妙な起伏を作っている。その起伏は四条の焼肉屋でホルモンを焼こうとした時、焦げと共に一瞬脂肪に焼きついたあの白っぽい起伏と同じものだ。泡立ち溶けて見えるラードのような、女の白い腕のような優しい起伏。
 これまでずっと、いつだって、有芽美はこの白っぽい起伏に包まれていたのだ。
 汁を縁に残した空のどんぶりはうどん屋の照明に染まりながら黒に近い。
 限りなく黒に近いデブーだ。美幸は座り直し、自分のうどんをつゆに浸しながら、このどんぶりみたいになりたいと思った。そして自分でこのぶよやかな白い起伏を揺らしてみたいと思った。美幸自身に映った優しい起伏を他の人々にも見せたいと思った。
 コップの縁が脂で濁り、うどんのどんぶりはすぐに下げられてしまった。ごちそうさまの声が聴こえるともうテーブルには何も残っていない。
 アパートの前のサボテンの側に、きのう捨てたリテラチャースプリングが転がっている。汚れている誌面にはまだあの記事が載っている。
 美幸は箸を置き、手を待った。
 手が伸ばされてきて、いらないのという声がここまで届けば、長く伸びたうどんが丸い手とリテラチャースプリングに重なるだろう。
そんな彼女のさまを見ていると、肌のふるえが机をとおして伝わったように、美幸は有芽美をかわいそうに思った。手を伸ばし彼女の頭をなでた。
「ドントタッチミー!」有芽美は彼女の手をふりはらった。
「ごめん」
「ううん、でも美幸に話したからか、お腹が膨れたからかすごく気分が楽になった。なんだかこのまま押し通せそうな気がする」
「そう、よかった」
「ありがとう美幸、お世話になったから今回はおごるね」
「え、珍しい」と言いながら二人は立ち上がった。「ごちそうさまです」と店主に声をかける。
「あ、領収書もらえますか」と有芽美は釣りをもらってから言った。入り口の方を見ながらその後につづく彼女の言葉を美幸は聞いていた。「あの、二十人前にしといてください。額面も宛名も結構です、日本下町文化資料費として計上するんで」
「自分を棚に上げない面食いはこの世に居ない」とずっとかけっぱなしのFMラジオから聞こえてきた。
自称芸術家葉月は困っていた。長くつややかなぬばたまの黒髪を抱えて使ったこともない立ち机にもたれかかっていた。某アザラシと同じ名を冠する美大を出てデザイナーになったものの、このところ他人のネタを自分のものにする技術が雑になってきたしパクリネタ不足で、ネット上では映画祭のために作ったロゴがパクリだと疑惑を持たれ、しかも自宅は杭が足りておらず、屋内を移動すると重心がぶれるのか、船上のようにぐらぐら揺れるためデザイン中は人も呼べない。
とはいっても生まれてこの方パソコンでのデザイン一筋なので、絵の具も絵筆もついぞ持ったことがなく、別段家が杭不足で揺れようと実際問題はないのだが、なんとなく芸術家としての体面上いらいらして子供の言い訳じみたあんな会見を人生で一度はしてみたいなどと思っていた。
「おはよう」家で下宿している美幸が起きてきた。彼女はそのままキッチンへ行ってドリップコーヒーを作ろうとしたが、家が不安定なのでヤカンの湯はあらぬところにぶらぶらこぼれてろくにドリッパーには注がれず、周囲へ撒き散らされている。「今日も二日酔いか、このところ毎日だ」と美幸は原因をわかっていない。
「ねえ美幸、どうやったらまえみたいにうまいことばれずに絵を盗めるかな?」
「盗まなかったらいいんじゃないの」美幸は眠気で眼を閉じて淡々と湯は何もない部分に広がってフローリングへとこぼれていた。
「そんなのできるわけないじゃん馬鹿じゃないのー創作なんてできたら最初からデザイナーなんてしてないし!」
「さあ」いつまでも出来上がらないコーヒーに業を煮やした彼女は冷蔵庫を開けてパックから直に牛乳をごきゅごきゅと飲み始めた。ふらつくたびに幾筋か白く細い線が彼女の毛穴ひとつなさそうな陶器の肌に描かれパジャマの胸元へ消えていった。「なんか字をそのまま使えばいいんじゃない少しアレンジしたら字なんてどれも似てるんだし大丈夫でしょ」
「それやって業界の先輩がしわしわのジャケット着て会見開く羽目になっちゃったからー他にもおかっぱの先輩はやたらビョーク好きだと思われてるし、一番偉い人のデザインは発表して二分でパクリがばれたけどファミコンのゲームソフトになった政治家に擁護させたから大丈夫らしいけどー私みたいな広告代理店がバックにいない弱小デザイナーは関係者にハニートラップしかけないと仕事なんてひとつもないけど、やっぱりデザインみたいな虚業をやってる人ってそこらの破天荒な美術家のイメージを自分の薄っぺらいプライドの代わりに大切にするから、好きでもないのに男のデザイナーばっかり食って出世して、それか男みたいな見た目の人しか生き残れないし、私みたいなかわいいのは見向きもされないからほんとむかつくよねー」
「たしかに美人デザイナーもイケメンデザイナーもいない。大概『美』から遠い。いい顔してるのってココ・シャネルとか三宅一生とかしか出てこないけど彼らはファッションデザイナーだし」
「どうしよう!」葉月は叫んでデスクの下で三角座りになった。「ほんとみんなパクリあいすぎて、もうどれが自分のかわからなくなってて、このまえなんてテーマが太陽だったんだけど私含めて出品者みんな同じ作品になったちゃったくらいだしーみんなこれは自分の作品だって言い合ってたら通りすがりの小学生に『え、岡本太郎でしょ?』とかいわれたしー誰だよそれ!」
「もう終わりなんじゃない? 他の仕事探したら?」
「こんなに人のふんどしはいて甘い蜜すえる仕事他にないし」
「全盲のデザイナーってことにしたら? そしたら低クオリティーでも感動してくれるでしょ」
「だめ音楽で似たようなことした人いてホームレスヘアーを切られてた」
「じゃあなにも見つけてなんていないけど論文出したい研究者のために画像でっち上げるのとかは?」
「それはノーベル賞級の科学者が自殺するから国益のロスがやばいー」
「じゃあもうあきらめたら」
「やだ!」
 私はデザイナーである。仕事はできない。どうしてなれたのかとんと見当がつかぬ。なんでも腹黒いねちねちした所でばりばりパクっていたことだけは記憶している。私はそこではじめて利権というものを見た。しかもあとで聞くとそれは広告代理店という社会中で一番わいせつな種類であったそうだ。この広告代理店というのは時々我々美人をつかまえてカキタレにするという話である。
彼女は「間」の作家
句読点や行間、次の章までの空白のなかに、まるでたった一個のスポンジがバケツいっぱいの水を吸い込んでしまうようなありえなさでたくさんのものをふくませてしまう作家だ
それはちょっとすごいことだと思う

ニシノユキヒコ君は顔がいい
身体もしなyかにみせかけてしっかりしていて、そして清潔
それだけでも女の子には好かれる要素はじゅうぶんにある
それなのに、彼はくわえて女の子たちが自分たちも知らずしらずのうちに見せる、言い寄られてもいいという気配を嗅ぎとってしまう
そんなんがもてるのはあたりまえ

だけど恋人によって呼び方の変わるこの男の子(彼は永遠の男の子だ)は、ついにお互いが愛しあう円満な愛を見つけられない
いつだってどちらかが惰性のように、まるで友達だけど異性だから「セックスもできる」ような感じでいる
そしてそんな感じでいる方が相手を本当に好きになったとき、何故か相手の恋は終わっているのだ

タイトルはどうして「恋と冒険」なんだろう
ぼくは冒険を辞書でひいてみた
冒険。危険を冒すこと。成功のたしかでないことをあえてすること。
そうニシノユキヒコくんにとって恋は「成功のたしかでないことをあえてすること」なのだ
きっとお姉さんにふりかかった哀しいできごとが、彼にとって恋をそういうものにしてしまったんだろう
おそらく彼は世の平均的男性がかすんでしまうほど多くの女性と恋をしたのに、一度も女性のぬくもりを本当に感じられないままたった一人で死んでしまった

途中、ある女の子が、女の子を幸せにしようなんて思ってはいけない
女の子は自分で幸せにならないといけないというのを読んではっとした
お姉さんを幸せにできなかった彼の後悔がとても皮肉なかたちで裏目にでていた
「不平等は平等を求め、平等は不平等を求める」と店員に取り押さえられた男は繰り返し叫んでいる。ヱビスかプレミアム・モルツか迷っていた美幸はちらりとそちらを見た。
「わたし専業主婦になりたい」と祐芽実はクリームのたっぷり乗ったプリンと鬼ころしを手に、ひじで美幸をつついて催促した。
「なりたかったらなればいいでしょ」美幸は肘をのけて、2つの冷たい缶で祐芽実のおでこをおしかえす。
「ぎゃー、でも彼は共働きがいいって」祐芽実は鼻にしわをよせて威嚇する。
「じゃあもっと話あったら?」いまだに二つのビールの間で美幸は迷う。
「でもねー稼ぎいいんだよ、超エリートだし」
「なら理由があるんじゃない?」美幸はヱビスを選んでレジに向かう。
「人間がくさるっていうの」
「そう」レジに商品を置いて、ポイントカードを断る。
「腐らないし、ママ友との自慢バトルとか上司の妻の飲み物に黒かび入れたり習い事したり忙しいもん。普通にそこらのしょうもないサラリーマンより忙しいし」
「それが腐るってことなんじゃないの?」
「しかもさ、どちらか一方がずっと家に居ることで子供にとっての親の存在が父母間で全く違うものになってしまって平等性が失われるとかっていうんだよ、わけわかんなくない?」
「そう?」
「ていうかわたしがお腹痛めて生むんだからちょっとくらい上なのが普通だし」
「普通?」二人は店を出た。ありがとうございましたー。
「そうだし、だって私のほんとの唯一の所有物だし」
「所有しちゃうの」
 二人はそのあとも話を続けたが、とりあえず専業主婦になりたい祐芽実とそれがよくわからない美幸との話は平行線のままどうでもよくなってきていた。ふたりは鴨川沿いを歩くが、顔だけかわいらしい祐芽実はこの寒さでうっすらと汗ばんでいる。鴨川ではさまざまな人々が歩いている。ギターのソフトケースを背負った若い男たち、幼い踊りを生放送している子どもたち、犬に糞をまきちらさせリードを外して愛犬の賢さをみせる飼い主たち、恋人たちは二人の内部で世界を超越している。
「専業主婦なったら習い事しなきゃいけないの」
「そうだよ、だって暇だもん」
「じゃあ祐芽実はなにかスポーツはじめてみたら」
「あのさ、美幸わたしべつに太ってないし運動に向いてないだけだし」
「そうなんだ」
「だからさ、わたし特別になりたいの。わたしは自分が特別だって生まれた時から知ってて、それあのに不幸なことに周囲がそれこばむの、でも私は特別にならないといけないし、そうでないと不公平だよ」
「不公平?」
 二人はベンチに腰をおろした。ビールのプルが立ってビールがため息をつく。プリンの蓋がめくられ甘い香りが川のせせらぎや車の走行音に憂かれ立つ。鬼ころしにストローが突き刺さる。
「そう不公平」
「その間違った不公平の考えを持った人間で世の中はマーケティングに失敗したジュースの新商品よりもあふれている」現れたのは多久だった。手のひらにブランデーを揺すっている。
「どっからきたの」
「どっからでもくるよ」
「気持ち悪い」祐芽実は引く。
「平等気取りの不平等贔屓人間が指定席を狙って断られ自由席で子供から席を奪って虚をつかれた思いがするんだよな」
「そんな子供嫌いの政治のためにその世界に入った教育者なんかと一緒にしないで」祐芽実は憤慨してプリンを吸い上げ大きくつぶらな瞳を持ち上げ気味の頬をプリン自体のようにぷるんとゆらす。
「他人と違うと信じていても結局同じように自分を他人と違うと信じる億千万の人間がいることを認められない人が、自分の無根拠な超越性を信じて傲慢な行為に走ってるんだよね、そうやって早い稲の田の大学でコピペだらけの博士論文を出したりできたり、嘘で人が死ぬんでしょ」
「でも右村河内は悪くない!」そう祐芽実は叫ぶ。
「そう彼は違う」多久は笑う「彼はただのちょっと耳が悪い人で、耳の悪さでお金儲けをしようとして、つい現代の暴走しがちな広告業の波にのって事実を大きくしすぎたんだね」
「でも世の中そういう人ばっかりなんじゃないの」
「そうだよ、みんな他者の波に飲まれないように身の丈より自分を大きく見せたがるから、ひとつの事実に十の偏見を足して話す。そうすると語るものを持っているように見えるし。それを繰り返しているうちに自分自身がその虚飾に騙されてしまってうつろな全能感を持って満員電車に挟み込まれてもう一歩も動けない状況でも自分は違うと信じていて、指定席料五百数十円をけちっている見識ある自分を疑わないってこと」
「でも私は専業主婦になりたい!」祐芽実は叫ぶ。
「だから彼を説得したらいいでしょ」多久に頭をなぜられるに任せながら美幸は言う。
「めんどくさい!」
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